高齢者が満足な医療を受けるということは、実はなかなか難しい現実があるように思います。
80代後半になる私の父の場合、
「お医者さんにきちんと診てもらいたい」
「お医者さんの説明を直接しっかり聞きたい」
ととても強く思っているようなのですが、この本人の思いはなかなか叶いきれません。
その理由は、高齢者ならではのコミュニケーション力の低下にあります。
どんなふうに具合が悪いのか。
どこがどういうときにどのように痛むのか。
どんな薬をどれくらい飲んでいるのか(処方通りにのんでいるのかどうか)。
診察をする上で大事なことですから、お医者さんはいろいろ聞いてきます。
このお医者さんの質問に一つ一つに的確に答えていかなくてはならない(答えたい)のですが、
このやりとりがなかなかうまくいきません。
高齢になると、耳が遠くなるので、お医者さんの言葉が聞き取れない、聞き違いをする。
高齢になると、話をするスピードが遅くなる。
高齢になると、話をしたくても言葉がなかなか出てこなくなる
(「え~」「あ~」「アレ」などが多くなる)。
高齢になると、理解力が衰えて、質問の意図がつかみにくくなる。
お医者さんの前でエエカッコシイになる。
(先生の言う通りに薬を飲んでいなくてもそうは言えない等、場合によっては嘘をつくことも)
そのため、診察の時に肝心のコミュニケーションがうまく進まず、
お医者さんによっては待ちきれなくなったり、少しイライラしたり。
次第に、本人の話を聞こうとしなくなってしまうのです。
そして、付き添いの家族に質問をするようになります。
家族の話を聞き、家族に対して説明をするようになり、患者本人には説明しなくなってしまうのです。
結果的に、診察の時間に患者本人は置いてけぼり状態になり、
ますますお医者さんの説明が理解できないままに診察が終わってしまうのです。
高齢で体が弱りながらもなんとか病院までは行けたとしても、
患者本人は、診てもらった満足を得られないままに診察が終わってしまう。
こんなふうになったとき、どうやって乗り越えていったらいいのでしょう。
ここ数年で、ターミナルケアや在宅医療はだいぶ進んできましたが、この日常の医療の
高齢者ならではの苦悩について語られることはあまりありません。
いい医療を受けたかったらお医者さんを信頼して、きちんと状況を伝えましょう。
よく言われることですが、そうしたくても加齢に伴ってコミュニケーション力が低下したせいで
それがなかなかできなくなっているのです。
願わくばお医者さんが、ゆっくりと待って時間をかけながら患者の話を聞いてくれれば・・・、
それが一番いいのでしょうが、なかなかそういう先生には出会えません。
待合室には大勢の患者さんが待つ状況の中では、お医者さんだってそういう風に心がけたくても難しい、
仕方がないことも理解はできます。
だから、この状況で高齢者が病院の診察を受けるならば、付き添いは必須。
それも、身体的な介添え的要素の付き添いにとどまらず、診察に当たっての患者の状況を把握し、
それをお医者さんに説明でき、さらにお医者さんの説明をかみくだいて患者本人に説明するところまでが
できたほうがよさそうです。
むしろ、身体的には一人で大丈夫であったとしても、診察を患者本人だけでなく
別の人も一緒に聞く、ということは大事なことだと思うのです。
身体的に弱っている場合は、高齢者が1人で病院に行くのは不安だからと、
家族が付き添っていくことは珍しいことではないかもしれません。
配偶者が付き添うなど、付き添う方も高齢だったり、
子どもが仕事を休んで付き添うことになったりすると、負担感は次第に大きくなっていきます。
そんなときのために、
病院の付き添いを外部にお願いするという選択肢もあることを知っておくとよいと思います。
ただ、一般に外部サービスの「病院の付き添い」というと、入退院の付き添いを指す場合が多いようです。
高齢者に限らず、入院や退院の際に付き添ってくれるサービスです。
通院の付き添いの場合、
どちらかと言うと「一人で歩くのが不安」と言った身体介助的意味合いが強いようですが、
満足いく医療を受けるためには、それだけではなく
コミュニケーション力のアシスト的な要素が大事だということを、ぜひ覚えておきたいものです。
そのため、外部のサービスを利用する場合は、患者本人や家族との相性も大きいので、
何度か利用しながらいい人を探していくくらいの気持ちで臨みたいですね。
家族以外にそういう人が何人かいると、
本人も、家族も、いざというときの安心感、心の余裕が生まれるのではないでしょうか。
家族は、それも特に同居家族だったら、
日頃の状況や体の状況をよく知っているから伝えやすい面があるかもしれません。
一方で、家族だからこそ患者本人がお医者さんに伝えようとしていることを遮って言葉をかぶせたり、
話を先回りしたり、お医者さんの話を患者本人よりも家族にとっていいように解釈・理解する
弊害もあります。
高齢者が診察を受けるときの付き添いは、身体的な介添えだけでなく、
コミュニケーション力のアシストという役割を担うこと。
そのためにコミュニケーション力が大事なこと。
そのコミュニケーションの主役は患者、付き添い人はあくまでも患者本人の補助であること。
付き添う人も、外部に付き添いをお願いする人を選ぶときも、
意識しておきたいところです。
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