私が住んでいる地域でやっている認知症カフェに行ってきました。
ここはせたカフェが主催している認知症カフェ。
「せたカフェ」は世田谷区の住民と介護家族と介護職関係者が集うケアコミュニティ。この認知症カフェを主催する以外にも、地域に開かれてたもちよりカフェや介護家族のための実践介護講座など、様々な活動を行っており、代表はおひとりさまの老後や棲家などについての著書も多数あるライターでもあり、男前なキャラクターがすごく魅了的な中澤まゆみさん。

会場を提供としているのは、地域に開かれたデイホーム「みのりの庭」です。

会場の「みのりの庭」は世田谷線・若林駅から徒歩1分の商店街に隣接した便利な場所で、その上層階はサービス付き高齢者向け住宅「ぐりーんさいとサルビア荘」です。
みのりの庭」も運営者がとても魅力的で、せたカフェが主催する活動に会場提供として協力しているほか、子ども食堂も展開するなど、高齢者だけにとどまらずに地域に開かれた活動を行っているので、私は以前から訪れたいと思っていた場所でした。

全国各地にさまざまな認知症カフェができてきましたが、せたカフェが主催している認知症カフェは、どちらかと言うとしっかりお勉強できるのが特徴ですが、おしゃべりする時間もある。
しかもそのお勉強は、とても面白い人たちから話を聞けるのです。

今日のテーマは「施設の認知症ケアについて~カリスマ特養職員とおしゃべりしながら認知症相談・交流会~」。
お話をしてくれたのは、特別養護老人ホーム千歳敬心苑の人材育成担当の山口さんでした。

山口さんのお話を聞いていて泣いちゃいました。
自然に涙が出てきたのです。
最初に山口さんが
「今日の僕の話を聞いて、特養に入りたい!って思ってもらう人が増えるといいな」
と言ったのですが、増えるどころか、お話が終わってほとんどの人が「入りたい!」となっちゃいました。さすが!

たくさんいいお話があったのですが、特に私が共感したことを中心にかいつまんでレポートします。

特別養護老人ホームとは・・・

一般的には「トクヨウ」と呼ばれますが、「特別養護老人ホーム」の略。
介護が必要なお年寄りのための介護施設です。
予約待ちの人がたくさんいてなかなか入れない、予約してから入れるまで何年も待たなくてはいけない、というイメージをお持ちの方がたくさんいるのではないでしょうか。
平成27年度より、介護度3以上の人でないと入れなくなったため、今ではそこまでの状況ではないそうです。
とは言え、入りたいと思う人はたくさんいます。

その申し込み方法や利用負担額についての説明もありました。
これらは自治体によっていろいろです。
山口さんのお話では、世田谷区の場合について説明がありました。
世田谷区は、入居したい施設に申し込むのではなく、入居したい施設を選んだうえで区に申し込むそうです。
利用負担額は所得に応じて区が利用額を補てんしてくれるケースもあるようです。ただしこれは申請しなくてはなりません。

そもそも介護とは・・・

山口さんからの質問です。
「介護ってなんでしょう?!」
なんと! 「介護」には定義がないのだそうです。
ある人は〇〇と言い、ある会社は〇〇と言い…というように、「介護」にはいろいろな解釈があるようです。

一般に、人にはそれぞれ「その人らしさ」と言うものがあります。
けれども高齢になることによって、その「その人らしさ」を保つための機能がだんだんと欠如されてしまうことがある。
例えば
「食べるのが大好きなんだけど、食べようとするとむせてしまう」
「歩いて出かけたいんだけど、すぐ転んでしまう」
「認知機能が衰えてしまう」
など。
その欠如する部分を補って、その人が望むように欠如部分を埋めるために介入することが「介護」。
そう、字のごとく、介入して護ることが「介護」。
介入して護る・・・何を護る?
それは、「その人らしさ」、すなわち尊厳を守ること。
~山口さんは、「介護」をそう考えているそうです。

でも、この介入をしないのがネグレクトだ、と位置づけていました。

介護の専門性とは・・・

「医療」とか「看護」と違って、
「介護」の専門性とは、生活支援のプロフェッショナルと言われています。
では、「生活」とは何でしょうか?
山口さんが言うには、「生活」とは、「活き活き生きること」。
介護職は、生きることを支援することにとどまらず、「活き活きと」の支援までをするのが専門性である、と。

そこで山口さんがうまいことを言いました(「うまいこと、言いますよ」と予告つきで・笑)。

介護をローマ字で書くと、
kago

真ん中にある文字は
そう、があるんです。

もしも愛がなかったら、kago
そう、カゴ(籠)の中にいることになってしまう。

老人ホームと言うと、とかくきちんと管理されて、いろいろお世話してくれて…
でもいくら面倒を見てくれたとしても、そこに愛がなかったらカゴの中の鳥のようなもの。
そういうお話がありました。
「ある、ある、」です…

本人はともかく、家族だといかにきちんと管理されているかに目が行きがちで、管理がきちんとしていると
安心だったりします。
ともすれば、カゴがいいような気になり、「愛」を忘れがち…
そういう高級老人ホームって、きっとたくさんあるような気がします。

自立した生活のために・・・

介護保険法の中には、目的として、「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、…」と書かれています。
けれども、現実はなかなかそうなっていないのでは?というお話がありました。

高齢者が運ぼうとする、片づけようとする、出かけようとする、持ってこようとする、…

自分がやりたいと思うことを自由にやりたいと思うのは当たり前のこと。
さらに今の高齢者は貧しい時代を助け合って生きてきた世代なので、誰かのために何かをしたあげよう、
役に立とうと思う人も多く、さらによく動こうとするようです。
そうすると、「危ない!」「どうしましたか?」「ちょっと待って」と言って、その行動を止めようとしてしまう。
代わりにやってあげようとする。

う~む、これは耳が痛い話でした……。
私の家族のことになりますが、我が家は老いた両親が2人で暮らしています。
なんとか二人で支え合いながら暮らしているのですが、私たち子どもが定期的に通っています。
そういうときに、私たちこどもは、ついつい言ってしまいます。

「危ない!」
「ちょっと待って!」
「やってあげるから!」

私の目から見たら危ないからそう言うのですが、それによって親はだんだんできなくなってしまうかもしれません。
きっと必要なのは、見ていることなのでしょう。
どうやったらやりやすいかを考えながら、余計なことを言うのではなく、親が自らやりやすくできるように。
待つのです。
だけど、これがなかなかできないのですね、家族だから。
家族だから気になっちゃうし、手を出しちゃうし、イライラしちゃうし。
子育てと同じかもしれません。

地域に開かれた活動

山口さんのいる千歳敬心苑では、地域に開かれたいろいろな活動をやっています。

例えば、
近所に暮らす高齢者でなかなかお買い物に行けない人のお手伝いをする買物キャラバン、
近所に暮らす高齢者で料理が面倒な人たちを対象に、みんなで夕食を食べようという会、
介護に関係するお悩みを題材に介護職を中心にした演劇集団が演じるお芝居公演、
認知症カフェ、など。
これらの活動は、現場の職員さんが取り組んでいるのだそうです。

いい施設を選ぶポイントとは…

最後に施設を探そうと思った時に選ぶポイントを教えてください、という質問があり、
山口さんが教えてくれました。

とにかく施設見学が必須。
パンフレットやホームページだけで選ぶなんて、問題外。
雰囲気を知ることが何よりも大事だと。

とは言え、雰囲気なんていくらでも取り繕うことができる。
だから雰囲気を知るためには、ただぐるりと見学するだけじゃなくて、
入居者が集まるリビングなどにしばらくいること。

だけど、最近では取り繕うことすらしなくなった施設が増えてきたそうです。

一般に、外からの見学者が「いい施設ですね~」と言うとき、その見学者は何をもって「いい施設」と感じるのでしょうか?!

それは、概ね職員の挨拶、感じよさからそう感じるのだそうです。
わかるような気がします。
逆に言えば、挨拶さえきちんとしていれば、「いい施設だ」と感じてもらえるようです。
だけどこの挨拶というのは、やはり侮れないのではないかと山口さんは思うそうです。
職員が施設に誇りを持っている、いい施設だと思ってもらいたい、と思わなければ、
なかなかそういう挨拶にはならないだろう、とも思うからです。

なので、「感じのいい挨拶」は、選ぶポイントの一つと言えそうです。

それ以外には、ビジョン(経営理念)をしっかりとうたっているか、地域に貢献する活動をしているか、なども
一つの指標になるようです。

最後にもう一つ。
それは、ホームページやパンフレットなどに入居者や職員の顔がたくさん出ているか、ということだそうです。

昨今は個人情報の問題で、なかなか顔を出すことができません。
だけど、信頼関係ができあがり、いい施設だと思うようになると、顔を出すことがNGにならなくなるから、と山口さんは言いました。
そこにいることが自慢に思えば、顔出しNGなどないのです。

 

人材育成担当…

でも何よりも私が驚いたのは、山口さんが特養の人材育成担当であること。
どこの職場でも、上司が部下を育成する、OJTで育成する、というのはよく聞かれますが、
「人材育成担当」という肩書き、立場の人がいる職場というのは珍しいのではないでしょうか。
介護現場であれば、なおさらのことかもしれません。

介護職は、
介護についての「知識」があること、高い「技術」があることは、どちらもとても大事。
喜んでもらうコミュニケーションも「技術」なんです。

だけど、その「知識」と「技術」をつなぐ「心」というエンジンが必要なのです。

人材育成担当の山口さんの言葉が沁みました。
これは介護職だけじゃない。どんな仕事だってきっと同じ。
「心」というエンジンが動かない仕事は、きっと面白い仕事にはならないはずだと、改めて感じました。

 

実は、今までに書いたこと以上に泣いちゃういい話がいっぱいあったのですが、
ここでは割愛します。
と言うのも、山口さんがいる千歳敬心苑は、来たる3月9日に烏山区民会館にて日々の活動についての実践報告会をするそうなので。
去年は300名の方が聞きに来たようですが、今年はもっと多くの方に聞いてほしいとのこと。
参加申込の予約受付中です。
きっと、そこでいろんな話が聞けるでしょうし、日々のエピソードだったら、ここで私が書くよりも現場の方のお話を聞く方がずっといいに違いありません。

 

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