介護は家族で抱え込まない。
外部のサービスを使って。
・・・これはよく聞くこと。
定説ではあるけれど、現実にどこまでできるかどうかと言うと、なかなか難しい問題だと、個人的には感じています。
何より本人が嫌だと言えば、なかなか前に進めなくなるのですから。
なんせ「老い」は誰にとっても人生初めての経験。
老親は初めて経験している「自らの老い」に向き合い、
私たち子どもも、「親が老いる」という初めての経験に向き合い、
この不安を乗り越えながら進んでいくわけですが、その理想と現実はなかなか一致しません。
理想論はよく聞くけれど、それぞれの人にそれぞれの事情や気持ちがあるので、なかなか一筋縄ではいかないのです。
もう少しいろいろな事例がわかれば、もっと我が家なりの形を考える余地もあるだろうし、選択肢も広がるのに…。
もっといい方法があるんじゃないかしら…。
そんなことをしばしば思っています。
だから、我が家の例もどこかで役立つかもしれないと思うから書き続けようと思ったのが、この「離れて暮らす老親 介護始まり日記」でした。
でもそう思ったのもつかの間、書く余裕などまるでない怒涛の日々が始まってしまいました。
今日は久しぶりの投稿です(汗)。
今日現在、私の「離れて暮らす両親」は、
訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、訪問診療、各種福祉機器レンタルのサービスを利用しています。
いろいろあったけれど、ようやくここまで来ました。
我が家と関わる
介護サービス事業者各社と、
医療事業者各所と、
福祉用具事業者と、
利用者(老親のこと)と、
利用者の家族が、
我が家に全員集合して、状況報告と合わせて不安や不満を共有し改善するために定期的に話をします。
それが月に一度行われる会議で、今話題の 介護と医療がチームでささえる多職種連携 です。
つい2ヶ月前までは、この会議に参加する利用者は父、家族は母でした。
そんなに参加する事業者さんが多くなかったこともあり、私たち子どもが出席することはなかったのです。
利用していたのも、自宅の手すり工事や、杖のレンタル、父の体力維持を目的としたリハビリに重きを置いたデイサービス。
(父はデイサービスを嫌がり、あまり行ってはいませんでしたが)。
ところが母が、父の介護疲れで急に弱ってきました。
もはや父の世話をできる家族がいなくなってしまったのです。
私たち子どもはみな離れて暮らしており、すぐ駆け付けることはできません。
そこでいろいろな事業者さんの協力を得なくてはならず、前述のような
・訪問介護
・訪問看護
・デイサービス
・ショートステイ
・訪問診療
・各種福祉機器レンタル
と多くのサービスを利用するようになり、子どもである私も、月に一度の会議にも参加するようになったのです。
正直なところ、やっとここまで来た、と言う感じ。
離れて暮らす家族にとって、月に一度の会議出席がまず最初のハードルです。
家族は一人が参加すればよいのですが、我が家の場合は今のところ、多少無理してでも子ども(姉妹)全員が参加するようにしています。
一人だけが参加すると、その後の連絡や契約や手間がすべてその一人に集中することになり、その負担は大変なことになるからです。
家族が離れて暮らしている人はどうしているんだろう?
一人暮らしの人はどうしているんだろう?
そう思わずにはいられません。
私たち姉妹も全員仕事をしている中でのスケジュール調整ですし、多職種連携の事業者さん全員と私たち全員のスケジュールを合わせることは、至難の業。
会社の会議参加者のスケジュール調整なんて、今思えば楽ちんなものです(笑)。
その会議をふまえて支援体制が整うわけですが、次に大変なのが契約です。
契約は、サービス開始前にそれぞれの事業所と事前に契約を結ばねばなりません。
現在、上記のようにたくさんの事業所が入っているため、それぞれと事前契約を結ぶのです。
1社との契約で、契約書はそれぞれ4枚。
サービス内容の契約、
重要事項説明書の契約、
個人情報保護の契約、あとはなんだったかしら…。
そこには、事業者、利用者、代理人、保証人のサインと印鑑が必要。
月に一度の会議の後で、今度はこの契約のために実家に行く時間を確保しなくてはなりません。
しかも事業者ごとに。
ひとつひとつ確認しながらの契約はとても時間がかかります。
そこに、支払い用の口座引き落としの書類も加わり、その口座をどこにするのか、銀行の届出印はどれだったか、両親に確認していきます。
ふ~っ。
我が家の場合、複数の介護事業者、複数の医療事業者が一度にたくさん入ることになりました。
急に多くの事業者さんとそれぞれ個別に契約を結ばねばならず、もはや私たちは仕事どころではありません。
できるだけ一度にすませようとして複数社との面会を1日の中に集中させたら、
契約は終わったけれど、私の方が何が何だかさっぱりわからなくなってしまいました。
今一度書類を読み返し、振り返り…。
こんなの、老親が自分たちでやるのは無理だなあ。
よくわからずに言われるままに印を押すしかない、となっても仕方がないだろうなあ。
悪い人がいたら、ひとたまりもないなあ。
介護離職というのは、こういう状況の中で起こるんだろうなと痛感します。
この書類だらけの契約は、介護保険を使うために役所が関わるので、どうしても必要なことなのだそうですが、
作業が膨大になり、仕事のための仕事がたくさん!
非効率的甚だしいです。
サービスを利用する老親や私たち家族はとても大変だけど、それだけでなく、介護事業者や医療事業者の人たちも本当に大変。
離れた家族には郵送する場合には、事業者さんは書類に付箋をたくさんつけて返信用封筒を同封して郵送するのだそうです。
そのための事業者さんの手間も実に大変。
そんなことよりも医療や介護に専念してもらったほうがずっといいとすら思います。
離れて暮らす私たち家族はこんな書類のために何回も実家に来ること自体バカバカしいのだけど、郵送してもらっても役所言葉で契約内容がよく分かりません。
それにそんなことをしたら、老親本人たちは、完全に蚊帳の外になってしまう…
良かれと思って私たちがやっていることが、本人にとって不満になるかもしれない。
私自身も大変な思いが無駄になってしまうのが嫌で、今のところは半分意地になって進めています。
体制が整えば、こんなに面倒ではなくなるようですが、果たしていつまで続くやら…
国(厚生労働省)が介護保険をスタートさせて18年。
人の尊厳を守り、利用者本人が自己決定できる形で、可能な限り生活を継続させること~そういう理念のもとに始まったのが介護保険です。
その理念はすばらしいけれど、それを利用するための仕組みがあまりに複雑で手間がかかるのは、本当に残念だと思います。
月に一度の会議も、契約も、多職種連携も、すばらしいことではあるけれど、ここまで大変だと「国が決めているから形だけ…」と形骸化していきかねず、もう少しなんとかならないものかと、市民である私は感じてしまいます。
もう少しIT化が進み、テレビ会議などが導入されれば、また少し変わってくるのでしょうけどね。
そういう私に対して介護事業者の人たちは、「全員揃わなくても大丈夫ですよ」と言ってはくれます。
たしかに事業者さんからみればそうなのでしょう。
でも家族にとっては、それだけじゃ終わらないんです。
そこには大きな落とし穴があるように感じています。
それについては、またいずれ…