これからは、60歳定年でリタイアし、悠々自適なんてことはなくて、
「二毛作、三毛作の人生を」と言われるようになりました。
東洋経済オンラインの記事、
「100年生きる前提」の人生設計に何が必要か 人生「二毛作、三毛作」する人の豊かな設計図」を読むと、たしかにそうでしょう。
言葉の上ではわかるけれど、これはなかなか大変なことです。
これまでずっと会社に勤めてきた人たち。
20年、30年、40年と、毎日通勤電車に揺られ、イヤなことや辛いことがあっても毎日通勤してきたわけです。
もうすぐそれが終わる…それが定年だったはずです。
まさかその後も働かねばならないなどとは思いもせず、定年後の時間の使い方に夢膨らませていた人もいたでしょう。
そのつもりだったのに、雇用延長や再雇用、あるいは転職など、当然のように働き続けることがあたり前になってきたのです。
これは10年前では考えられないことでした。
私自身は普通の人とは逆でした。
会社の仕事が面白かっただけに、将来定年で会社を辞めざるを得なくなって自分の仕事を取り上げられたくはなかったから、早めに "次のステージ" に移らねばと思って自ら会社を辞めたのでした。
それがちょうど10年前のこと。
当時は、今のような時代がくるとは想像もしなかったのです。
しかし、会社は辞めたものの社会はそうそう甘くなくて、私は "次のステージ" になかなか乗ることができませんでした。
会社を辞めたことを何度も後悔し、戻ることも進むこともできなくなり、悶々とした時間を過ごしました。
苦しいトンネルに入ったようで、精神的にも落ちて行くのを感じました。
だから、「人生は二毛作、三毛作」だなんて、そう簡単ではないと声を大にして言いたいのです。
当時の私は、会社以外のつながりは人より多く持っている方でした。
仕事も年齢も関係なくいろんな人たちとのつながりがあり、そう言う人たちとよく遊んでいました。
会社の看板の力が大きいことは十分わかっているつもりでした。
けれども、自分の生き方、働き方という軸を持って考えたことがなかったのです。
会社を辞めてから私が何を苦しんだのかを考えてみると、
自分が何にこだわり、何に向かっているのかがわからなくなっていたことのように思います。
自分は何が得意で、どんなことで社会の役に立てるのかを考えはじめるとわからなくなり、ほとほと自分に自信がなくなっていくのでした。
その結果、自分がやりたい仕事をするはずの ”次のステージ” を探そうとしても、その「やりたい仕事」が何なのか、どういうものなのかも見えなくなり、探しようもなくなってしまうのでした。
人生二毛作、三毛作ということは、自分は何が得意で、どんなことで社会の役に立てるのかをはっきりさせないと、考えを進めることができません。
定年が気になり始める50代、
役職が上がればマネージメント業務が増えていくので自分の本当の実力が見えにくくなるし、そもそもそんなことを考えないまま日々の仕事に邁進して来た人がほとんど。
学生時代にキャリア教育を受けている今の若者と違って、そんなことを考えるための教育を受けた機会もほとんどありません。
気づいたら、定年まであと○年…。
大手企業の一部は定年間際にそれに近い研修をしてくれますが、それも「追い出し研修」などと揶揄され、なかなか前向きに受ける人は少ないようです。
でも、それでは人生の二毛作、三毛作はできないんです。
どうやって二毛作、三毛作するか。
30代、40代のときからそういう視点を持ちながら日々の仕事をしていたら、きっと仕事の取り組み方が違ってきただろうと思います。
今30代、40代の人にはそれをお勧めするけれど、もう間に合わない50代の人は、
もし会社に「追い出し研修」があるなら、嫌がらずにいいチャンスと思って前向きに受けたほうがいいです。
斜に構えていたら見えないことも、向き合えばそこでいろいろ気づかされるはずです。
そして苦しくても、自分は何が得意で、どんなことで社会の役に立てるのか、を言語化し、
その上で、それを求める人がいるのか、場があるのかを考えてみることをお勧めします。
寿命が著しく伸びて、定年から30年も40年も生きる時代になりました。
元々、10年あまりを支える予定だった年金ですから、そもそももつわけありません。
それに、昔に比べて定年してもバリバリに元気なんですから、何もやらずにゆっくりするには時間がありすぎます。
冒頭で紹介した東洋経済の記事によれば、
1つの畑で二毛作、三毛作できるようにしたり、畑を複数持ってみたりと、自分が働くフィールドを自分で見つけ、その中で収穫を上げていくのです。
とのこと。
こんなにも変化が激しい時代。
自分では気づきもしないことが、意外に他では評価されたり、思いもかけずに仕事になったり…
そのためには自分のことを知っておくことが本当に大事だと痛感します。
50歳超えても、というか超えてるからこそ、自分のことがわからなくなってしまうのです。
今までそれなりに実績を重ねてきたし、誇りもあるし、だから今さらなかなか…。
でもだからこそ!
長年いろいろ経験してきたからこそ、二毛作、三毛作できるというのも、また真理です。
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