アポ電!
オレオレ詐欺が問題になって以来、あちこちで注意喚起されていたと思っていたら、それを上回り、ついには殺人にまで及ぶ凶悪犯罪が出てきたのが3月。

子どものふりして電話してくるのはオレオレ詐欺と同じですが、敵はさらにワルで、家にあるお金の金額を聞き、それを取りに行くと言って殺してしまうという凶悪さは、テレビや新聞を賑わした通りです。
このニュースのせいで、一人で暮らす老親はものすごく不安にさせられています。

このコラム、「離れて暮らす老親 介護始まり日記」は、ここのところ更新が止まっていました。
というのも、我が家ではこの3ヶ月いろいろあって、結局私の母は今、一人暮らしになりました。
そんななかで今、母を最も不安にさせているのが「アポ電」。

現在私たち姉妹は、頻繁に一人暮らしの母に電話をするようにしています。

電話に出る母は大きな声で、「誰?」と泣きそうな声で叫ぶように答えます。
それを聞いた私は「き・み・こ。大丈夫。きみこよ」とゆっくり答えるのですが、
「本当にきみこなの?」と何回も言うのです。
用事があって電話するのと違って、いわば安否確認の目的半分で忙しない朝に電話するので、こちらもそうそうゆっくり話してなどいられません。
それなのに、何度も何度も本当に私なのかと確認し、次々の不安なことを聞いてくる母の電話対応。
時によっては、それが長引いて出かけるのが遅れてしまうこともあるのですから、私にとっては少々面倒くさくいもの。
母をそこまでにさせる原因が、あのアポ電なのです。

もしもこの電話がアポ電だったら・・・
もしも急に凶悪な人が家に押しかけてきたら・・・

母の心配は尽きません。
不安で不安でしかたがなくなるようなのです。

母は、急にめまいが襲ってきて嘔吐し続けることがあったり、心臓発作を起こしたりすることがあります。
どちらもすぐに命の危険があるわけではありませんが、その発作がいつ出るかわからないし、発作が出ると一人では立っていられなくなります。
どんなに父の介護の世話が大変であったとしても、父と一緒に暮らしている時は一人ではありませんでした。
歩くのもやっとの父でしたが、母に発作が出たときには父がいた。
でも今、母は一人暮らしになったことで、母は一人でいることが不安なのです。
だからと言って、お友達とのおつきあいやつながりを大事にしたいので住み替えは考えられない、というのが、今の母の気持ちです。

今や高齢者の3割がひとり暮らしの時代、母と同じように、毎日不安を抱えてビクビクしている人が、きっとたくさんいることでしょう。
「アポ電」は単に犯罪として酷いのはもちろんのことですが、多くの人の楽しく幸せに暮らしている気持ちまでもズタズタにしてしまったのだと、心底腹立たしく思います。

さて、このアポ電の恐怖を抱える老親の子どもとしては、いったい何ができるでしょうか。

オレオレ詐欺対策としてしばしば言われるのが、電話に出ない、留守電にする、というのがあります。
それは正しい対策だけど、現実問題として、それは高齢者にとってはかなり非現実的だと感じています。

我が家も母には携帯電話を持たせ、日ごろから固定電話には出ないように再三言ってはいるのですが、なかなかそれが徹底できません。
耳が遠くなってきた母には、固定電話の音なら聞こえても、持ち歩いていない携帯電話の音は聞こえないことがしばしば。

でもそれ以上に問題なのは、地域のおつきあいはみんな固定電話が中心だということ。
お友達だけでなく、町内会や地域包括支援センター、ケアマネジャーさんも、固定電話に連絡してきます。
それに出るな!というのは無理な話。
そういう方々にひとりづつ携帯電話の番号を母から連絡するのは、なかなか大変です。
しかも、介護サービスを利用していれば、次から次へとさまざまな介護事業者と新たな関係が始まり、介護だけでなく家事支援もあり、家に入ってきます。

我が家の場合も、母のところにはケアマネさんが定期的に訪問し様子を気にしてくれます。
週1回体力維持増進のための体操教室に通うための業者さんのお迎えが来て、家の掃除をしてくれる家事支援の方も週に1回来宅します。
これらが毎回、来宅前に時間の確認電話をしてからやってくるのです。
何か事情が変わって新しい事業者さんが入ればまたそこで契約、来宅。
来宅前には必ず在宅確認と併せて何時頃来るか連絡が入ります。
さらに実家がある地域では高齢者が増えているので、町内会でもお互いに助け合おうという空気の中で連絡し合ってくれてありがたい限りなのですが、そこに登録されているのも固定電話。
このような状況で、電話に出るな、は現実的ではありません。

さらに留守電にして、メッセージを聞いてから折り返せばいいというのも、機械に弱い高齢者にとってはなかなか大変。
一度教えてもすぐにわからなくなってしまうので、何回も何回も教えねばなりませんが、一緒に暮らしていないと、なかなか知りたいときにすぐ教える、というわけにはいきません。

我が家の場合も
「この前教えてもらったけど、やっぱりわからなくなっちゃったの。今度来たら教えてね」と母はしばしば言います。
でもいざ実家に行ったときには、そのときもっと大事なことで終わってしまい、なかなか電話の使い方にたどり着けないことも。

家族だけでなく地域で支えよう、という空気がある地域であればあるほど、固定電話の重要性が高く、本当に難しい時代になったものだと思います。