年齢とともに父はあちこち痛くなり、次々と体調を崩し、
今日は皮膚科、明日は整形外科、その次の日は呼吸器科、さらに次の日は胃腸科と
毎日病院に行くようになりました。

家でじっと寝ていられないほど辛いようでした。
でも体力が落ち、体調も良くないので、とても1人では病院に行くことができません。
近い距離であっても、バスやタクシーを使って毎回母が付き添って通っていました。

病院では様々な検査をするのですが、結果はどこも異常なし。
それで帰ってくるのですが、夜中になるとまたどうにも具合が悪くなり、
耐えられずに救急車を読んだり、朝まで我慢してまた病院にタクシーで駆けつけたり、の日々。
その間に定期的に通っている病院の予約が入っています。
父は、それもきちんと行かないと、もしも悪くなっては大変だと強迫観念に取りつかれたように病院通いの繰り返しです。
本人は痛い、苦しい、どうにもならないのですが、どこに行っても異常がなく、このような病院通いが繰り返されるうちに、付き添う母はだんだん疲れていきました。

そのうち母が、そうそう父の付き添いできなくなってくると
私たち子どもに、

死にそうだ、
助けてくれ、
病院に連れて行ってくれ、

と父から電話が入りました。
電話を受けた私たち子どもは、そうなると仕事を休んで車を出し、迎えに行き、病院に連れて行く…。
どうしてもできないときは、姉妹間で連絡を取り合ってできる者が交代する。
私たちが迎えに行く場合は、だいたい家の車を運転して迎えに行くのですが、
そのうち父は頻繁に私たち子どもにSOSの連絡をしてくるようになりました。
最初のうちはなんとかそれに応えていましたが、
私たち子どもも、仕事やそれぞれの事情があるので、そうそう病院付き添いをできるわけではありません。
さすがにだんだん無理が出てきました。

そこで私たちがいなくても大丈夫な体制を組まねはならないと考え、
姉妹で相談し、ケアマネに相談し、「他人」に助けを借りることにしました。
病院同行、通院の付き添いをヘルパーさんにお願いしようと思いました。
介護保険ではいろいろ難しいのですが、自費のサービスであればお願いできそうです。
私たちが誰も行けないときのために、そういうサービスを活用していくことを少しづつ考えていこうと思ったのです。

そこでケアマネさんとも相談し、
ケアマネから父に提案してもらったところ、これが大変な拒否に遭ってしまいました。

僕はねぇ、家族に病院に連れて行ってもらえなくなったら、もういいんです。
家で死んだ方がマシ。はい、さようなら、と。

それでいいんです。
せっかくのご検討、大変ありがたいことですが、うちの場合は結構です。

父はケアマネにそう言ったそうです。

これにはケアマネも困ったようですが、正直なところ私たち家族は本当に困ってしまいました。
父の病院について行ってやれない申し訳ない気持ちを抱えつつ、
だけど急な対応はなかなかできないし、だったらどうすれいいのか?!
父と言い争うこともたびたびありました。
母は、これからどうなっていくのだろうと不安がるし、
私たち子どもも実際のところどこまで対応できるか、半信半疑でした。

家が好きで、あまり外に行きたがらず、介護サービスを利用したがらない父。
元気だった頃は考え方は柔軟で懐も大きく、周りへの配慮もできる人でしたが、
体がだんだん弱ってきたのに伴い、親の威厳を保ちたがるようになりました。
典型的な昭和1ケタ世代。
今だにプライドだけは高く、子どもとしてはなかなか扱いが難しい人です。

しかし、そのうちどうしても母も私たち子どもも誰も病院に付き添えなくて、
それでも父が病院に行くのを諦めきれない、という日がやってきます。
苦しくて苦しくてどうしても病院で診てもらいたい父は、
あれほど外部のヘルパーさんの動向を嫌がっていたのに、
すぐに病院に連れて行ってくれるヘルパーさんをお願いしてくれ、と私に言ってきました。

実際はすぐにと言われても急な対応ができるわけでは無いのですが
父の方が言ってきたので、そのタイミングを逃さずにすぐに手配を進めました。
以前に一度断念したことがあったからこそ、ケアマネさんへの連絡からの流れはスムーズでした。

子ども孝行で、子供の言うことに素直に従ってくれる親もいるでしょうが、
我が家のように、家族以外の人の手を借りることを嫌がる親御さんが多いという話は、しばしば耳にします。
家族ですから遠慮がないし、怒鳴ったり怒ったり喧嘩することもたびたび。
それでも、いつか受け入れる日が来るように思います。
嫌がるから…と家族があきらめることなく、できるだけ家族以外の人の手を借りる形を模索していければと思います。
ダメ元で何度かトライし、タイミングをとらえて進めていくしかないのかなと感じています。

私の場合は、多少知識があったので早い段階からいろいろな可能性を考え、ケアマネさんにはいろいろなケースについて相談していました。
高齢者は、弱ってくるとあっという間。
坂を転がるようにいろんなヘルプが必要になるようです。
そういう時に、離れて暮らす子どもの自分の仕事や家庭がニッチもサッチもいかない状況だと、どれだけ大変なことでしょう。
「まだ必要ないだろう」と思うくらいの時から考え始めておくことは、決して無駄になりません。