そろそろ定年・・・という世代にとって、老親のことはなかなか大きな悩みのタネ。
しかも今の時代、一緒に暮らしているというよりは、離れて暮らしているケースの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
同居とは違う、離れているからこその問題。
まだ介護という状態ではなくても、何かと呼び出されたり、気がかりだったり・・・
このコラムでは、定年が気になる世代が離れている老親とどう付き合うか、介護始まり状態をどう乗り越えたか、
等についも、時々書いています。

 

介護を家族だけで抱えてはいけない、
プロだからできること、家族にしかできないことがある
家族にしかできないことをしよう、お願いできることはプロにお願いしよう

私は心からそう考えていました。
けれども、多くの人にしばしばそう言っている張本人だったにもかかわらず、
自分自身の親については、なかなかそう簡単には割り切れず、悩ましい日々が続きました。

我家での「父を施設に入れる」選択は、とても高いハードルでした。
その一番の理由は、父本人が自宅に居続けたいと強く望んでいたから。

しかも元気な時から、最期まで自宅にいたいと何度も言い続けていたのです。

父は、直接的には言わなかったけれど、内心は、私たち家族がもっと父に尽くしてほしい〜と思っていることは、うかがえました。
気づかなければいいでしょうが、家族だから、そういうことはすぐわかってしまう。
でも私たちそれぞれに生活があり、仕事もあり、24時間父についていることなどできない。
私たち子どもがなかなかできないとなると、老いた母が一人で踏ん張ることになります。
だから罪の意識というか、何とも気持ちの良くない感じがいつも消えることがなく、
いつも、実家に行かなきゃ、実家に行かなきゃ、という思いに追いかけられているような、そんな日々が続くのです。

それでも、いずれは施設にお願いしなければいけない日が来る。
でも、いよいよ自宅が無理となった時に、そんな父をいったいどう説得したらいいのか・・・。
それが最大の悩みでした。
両親の家に行く機会が増え、そのたびに、これから自宅での生活が難しくなっていったときにどうするかを家族で話してきましたが、いつも堂々めぐり。
どうやってコトを進めればよいのか、専門家や介護職の人に相談しても、なかなかいい答えは得られません。
ネットで調べても、親を説得する方法などほとんど出てきませんでした。

いろいろ考えた結果、私は父を騙して、父を施設に連れていくことにしました。
これは決して感心できる方法ではないと思います。
でも私たち家族はみんなそれぞれぎりぎりの状態だったし、元気だったはずの母は心が壊れそうだったし、そうでもしないともたないと思いました。
もっともっと大変な状況で頑張っている家族はたくさんいることも承知してはいますが、私たちはそこまでは頑張れませんでした。

でもこれは今だから言えることです。
当時は、本当にこんな風に進めてよいのか、父を移してからも、本当にこれでよかったのかと悶々としました。
友人知人にも、父を施設に入れたことをなかなか言えませんでした。
けれども半年が経って、今、あのときの決断は本当によかったことだったのだと、自信を持って言えます。

ではどうやって父を騙したのか・・・
そこには多くの方の協力がありました。

どうしても家に居続けたい、という父の意志を尊重し、

元来、私の父は自分のカラダの状態に神経質で、原因究明のための検査を好み、常にその結果に固執していました。
在宅医療が始まってからも、訪問看護師さんや在宅医療のお医者さんが自宅を訪ねてくれる日を楽しみにしていました。
厚い信頼関係もできてたのだと思います。

そこで、私たちはその先生や看護師さんたちを味方につけて、先生方のオススメする最新医療を受ける~というシナリオを作りあげていったのです。

施設を紹介してくれた人は、在宅医療訪問医の先生のお弟子さん、という役を演じてくれました。

「最初は帰りたいと騒いだりするかもしれませんが、そこは家族の心を一つにして。
家族の思いがバラバラだと、お父様も迷います。
お父様がかわいそうなどと思うのは間違いです。お父様にも失礼ですよ。
もしも家族がかわいそうと思っていたら、それはご本人にも伝わります。
家にいられないのがかわいそうなのではなく、家にいる方がかわいそうなこともあるのですから」

ケアマネからも、紹介者からも、事前にそう言われていました。
私自身も、その言葉にどれだけ慰められたかわかりません。

こんな形での施設入所でしたが、父はだんだん施設での生活に慣れていきました。
いつも、不安がいっぱいの父でしたが、精神的にも落ち着いていきました。
健康状態もよくなっていきました。

「帰りたい」とは言わなくなりましたし、それどころか母の体調を気遣うようになりました。
母に負担をかけるから「もし家に帰るなら、もう少し自分で動けるようにならないとな」とまで言うようになりました。
施設というプロのスタッフに囲まれた環境だからこそだと思います。

でも、これで終わりではありませんでした・・・

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