介護施設に行ったことがあるでしょうか。

特養(特別養護老人ホーム)などの介護施設に行くと、眠っているのか起きているのかよくわからない寝たきりの老人が、大きな口を開けて天井を向いてベッドに横たわっている様子を目にします。

天井を向いて。
目をつむっていたり、うつろな目をしていたり。

その景色は珍しいものではありません。
初めてそれを目にしたとき、私は大きなショックを受けました。

それは同居していた祖母が脳出血で倒れて入院し、起き上がることすらできなくなり、転院先を探しに方々を訪ねた時のこと。
まだ20代の頃でした。
私は恐怖に近いような感覚を覚えたものです。
襲われるはずなどないのに、怖くて一人では近づけなかった・・・

人は人生の最後の最期、どうなるんだろう?
私の大事な家族は?
そして私は?

その風景を見てから20年くらいたったころからでしょうか。
そんなことが気になるようになりました。

義父は病気だったけれど亡くなる2週間前まで家庭菜園を楽しみ、3日前まで好きな肴で晩酌し、静かに逝きました。
それまでの時間を間近で見ていた私は、改めて20年以上前の祖母の最期を思い、考えるようになったのです。

さて、冒頭で書いた「大きな口を開けてベッドに横たわっている老人」。
それを、石飛先生は「ムンクの叫びの顔」と言いました。
たしかに、似ているかも・・・
石飛先生とは、世田谷区の特別養護老人ホーム芦花ホームの常勤のお医者さんで、
「平穏死」と言う言葉をこの世に広め、数々の著書を出されている先生です。

石飛先生は元々手術をして治すことが使命だった血管外科医。
自らを「部品交換屋だった」と笑いながら言います。
「病いを治して先に進む」ところだった病院に長年勤務していたけれど、
人生最終章の現場が見たいと、芦花ホームに移ってきました。

その石飛先生のお話を聞くと、「ムンクの叫び」を作りだすのは、周りの人たちのせいかもしれないと考えさせられます。
少しでも長く生きてほしい、と思う気持ちが「ムンクの叫び」を。
きちんと責任を全うしている、と思う気持ちが「ムンクの叫び」を。
そこには本人の気持ちがありません。
もはやその時、本人は意思を伝えるだけの力(能力)が残っていないので。

石飛先生のお話によれば、

人は人生の最終章が近づくとだんだん食べなくなり、どんどん食べる量が減って、
食べなくなるとよく眠るようになる。
眠って、眠って、眠って、そのまま穏やかに逝かれます

と。

食べないから弱る、食べないから死ぬのではない。
死ぬから食べないのだ。
眠って、眠って、楽に逝ける。

人生途上でDNAが傷つき、それが本来なら処理されるのに、それがうまくいかずに溜まって病気になっていく。
ガン、動脈硬化、糖尿、認知症、老衰・・・
意味があるなら治療して乗り越えていく。それが人生だろう。
だけど、もしも治療が目的になっているとしたら、それはおかしい。
何より本人にとってそれはどうなんだろう?と。

老親のことを考えると、私も最後になったら
「できればもう少し・・・」「なんとかしてもらえないだろうか?」と思うかもしれません。
例えそれが無理だとわかっていても。
家族だからこそ、愛情があるからこそ、なんだけど、だから難しいですね。

でも本人にとってはどうでしょう?
20代の私が感じた恐怖に近い気持ちは、私は「ムンクの叫び」になりたくない・・・という心の奥底の気持ちからだったような気が、今になってするのです。

その石飛先生が力を込めておっしゃるのが、
生きている間は自分の責任だ、と。
自分がどう生きて、どう死ぬのか。
もちろん、いつどこでどうなるかはわかりません。
だけど、メタボにならないようにするのも、自分の責任だと。

結局のところ、生きている今をどう生きるか。
これからをどう生きるか。
生きているということは、そういうことなのだと思わざるを得ません。
年を重ねてきたからの話ではなく、どんなに若くても、例えば高校生であっても、きっと同じ。
生きている今をどう生きるか。
これからをどう生きるか。
それは、本来誰でも人生のテーマそのものだと思います。

 

 

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