我家では老親が東京郊外に二人暮らし。
私たち子ども(3姉妹)は、車で1~2時間の距離にそれぞれ独立して所帯をかまえており、
それぞれが1ヶ月に1度老親宅を訪問するようなリズムが続いていました。
3姉妹なので、親にとっては月に3回くらい誰かがやってくるというリズムです。
しかし、父がだんだん弱ってきたのに伴い、その頻度が日増しに増えていきました。
当時の父は杖を使って歩くのがやっとで、何をするにも母の介添えが必要になっていました。

父はもともと、デイサービスもショートステイもずっとイヤがっていたので、
その中身や実際に来ている方々の様子を見ながら、父が喜びそうな介護サービスをいろいろ探し、
提案し続けたのですが、当初父は頑として受け入れませんでした。

ようやく多少耳を貸すようになって、渋々納得して契約まで行っても、
いざ当日になると母にキャンセルの電話をさせてしまう日々が続きました。

そのうち、ケアマネともたびたび細かく相談し、通所介護、訪問介護、訪問看護、訪問診療、入浴介助、家事支援等…、
在宅で提供されるあらゆるサービスを整えていき、いつ何があっても大丈夫な手立てを次々契約しました。
この体制を整えるまでが、まずひと苦労です。
やっと整えても、それをことごとく父が拒み、挙句の果てには家にやってくる事業者さんを怒鳴りつけて追い返してしまうことも。

それでも介護事業者さんの協力でなんとか続けていたのもつかの間、
1日おきに父から昼も夜中も関係なくSOSの電話が入るようになっていきました。

無茶は言わないで、今すぐには行けない、と言うと、わかったと言って電話を切り、自分で救急車を呼んでしまいます。
病院に着くと、「この程度で救急車を呼ぶな」と叱られて帰されてしまう…。
それにずっとつきあっている母は、身も心も疲労困憊してしまう…。
こんなことが、約1年続きました。

私自身も、携帯がなるたびにドキドキする日々になっていました。
まわりに迷惑をかけることが増え、仕事どころではありません。
介護離職が起こる理由が、実感としてとてもよくわかります。

両親二人がなんとか自宅で暮らしているのは、元気でいる母がいてくれるからこそ、のこと。
母を少しでも休ませるために父をショートステイにと思うのですが、父がどうしてもイヤだというので、
私たちは母を守るために、父ではなく母をショートステイに避難させることにしました。
そんなに自宅にいたいのならと、父は自宅に、母は休ませるためにショートステイに、という提案です。

母は父を一人にすることを不安がりましたが、私たちがなんとかすると言って説得しました(実際にはなんとかすることなど、できはしないのですが)。
父も自宅にいられるのであるならと提案を快諾し、1週間の父の一人暮らしが始まりました。

一人で歩くのがやっとの父を、家にたった一人にするなど、とんでもないことだと非難されるかもしれませんが、父自身が家にいることを望むので、どうしようもありません。
私たち姉妹は、もし父が倒れて万一のことが起きたとしても、それは父が望んだことだから仕方がない、と覚悟したのです。

この計画にはケアマネもびっくりしていましたが、最終的には了解しただけでなく、一人暮らしの父を影でサポートしてくれました。
今まで私たち家族にずっとつきあってくれたからこそ、私たちの思いも父の思いも理解してくれていたからこそと思います。

実際、ショートステイに避難した母は、数日で顔つきが穏やかに変わり、少しづつ回復していくのがよくわかりました。

一方、父の方は一人暮らし中に自宅で転倒し、私の携帯に「助けてくれ」と電話をかけてきました。
私はすぐにケアマネに連絡し、ケアマネは訪問看護師さんを手配するとともに、自宅まですぐに様子を見に行ってくれました。
幸い、父は打ち身だけでかすり傷一つありませんでした。

そんなことがあったにもかかわらず、それでも父は自宅に居続けることを望みました。
せっかく回復して自宅に戻ってきた母でしたが、自宅に戻って父の世話をしていると、1週間もしないうちに再び言動がおかしくなっていきました。

その後、昼夜問わず、父も母もたびたび私たち子どもに電話をかけてきます。
父は母の文句を言い、母は父の文句を言い…。
頼むから様子を見に来てくれ、と。
我家ではこういう状況を続けながら、綱渡りのような毎日をしばらく繰り返していました。

この時期、役に立ったのは各種アプリでした。

まずLINEでは姉妹グループを作り、毎日の情報共有を行いました。
ケアマネや介護サービス事業者からの緊急連絡の報告や依頼事項もこれ。
重要事項や保存事項はLINEグループ内のノート機能を使いました。

そしてスケジュール管理は、タイムツリーというアプリを使いました。
タイムツリーは、家族、カップル、サークル、バイトなど色々なグループでのスケジュール共有に利用できるアプリですが、共働きママを中心に人気アプリなんだそうです。
訪問介護の日、お掃除の人が来る日、食事づくりの援助をお願いする日、食材が届く日、訪問看護の日、訪問診療の日、デイサービス…親関連のスケジュールはいろいろあって、私たち世代にはんじみ農水モノが多いだけでに、まずこれを把握するのが一苦労です。
タイムツリーの家族カレンダーには、私たち姉妹それぞれが絶対NG日となんとかなりそうな日をを色分けして記入し、親から連絡があったときには(誰に連絡が入るかわからないので)そのカレンダーを元に対応方法を考えるのです。
私自身は通常自分のスケジュール管理にGoogleカレンダーを使っていたのですが、自分のGoogleカレンダーと連携でき、タイムツリーは家族カレンダーと自分だけのカレンダーと使い分けもできたので、とても便利でした。

ケアマネとの連絡は、基本的には姉妹3人を宛先にしてもらうメールでお願いし、できるだけ情報共有を心がけました。
母からの連絡も、できるだけ私たち姉妹全員を宛先に入れるメールで頼み、私たちからのメールでも全員を宛先に入れました。
(父はメールはできませんでした)
もし電話連絡があったときには、LINEグループで姉妹の間で報告します。

メールやLINEの読み書きコミュニケションだけでなく、姉妹間の話し合いにはZoomも使いました。
微妙なニュアンスを伝える場合や、話し合いが必要なときには、本来は会って話すのがベストですが、家族の状況も働き方もいろいろな3人なので時間を合わせるだけでもなかなか大変。
出かけなくてもいいように、スマホでもPCでも、ということでテレビ会議アプリのZoomを使いました。

ホウレンソウ(報告・連絡・相談)、まるで仕事と同じです。
負担感を全員が共有できないと、次の一歩に進みにくくなります。
一人に情報が偏ると負担もそこに集中しがちですし、冷静な判断ができなくなることもあります。
だから情報共有が必要なのですが、そこには情報共有するだけで大変な時間と手間がかかります。
そのため、兄弟姉妹間で遠距離介護を進める場合に、ITの活用は必須だと思います。
このようにアプリにずいぶん助けてもらいながらも、このプロセスを繰り返していく中で、私たちは少しづつ「やはりもう自宅で暮らし続けるのは無理かもしれない」と考えるようになっていきました。

今思えば、私たち姉妹にとって、この頃が一番きつい時期だったかもしれません。