今の我が家の状況は書いた通りですが、私の父はたくさんの身体上の問題を抱えていました。
高齢になれば、どこの家でも似たり寄ったりかもしれませんね。

帯状疱疹、脊柱管狭窄症、極端な便秘、前立腺肥大、…

10年前に少し無理をしたのがきっかけなのか、「帯状疱疹」になりました。
父は70歳で会社をリタイア後、新しいことをやろうと試行錯誤していました。
運よく某大手企業から大きなチャンスをもらい、晴れ舞台が続いていた時に疲労が蓄積し、体調を崩しました。
帯状疱疹は、そんな無理が重なっていたときに罹患しました。

いつもなんとなく腰が痛い、足が痺れる…病院を巡っていたときにわかったのは「脊柱管狭窄症」でした。
なかなかよくなることはなく、周りの筋肉を鍛えて少しでも腰への負担を軽くするのと、電気をかけること。
手術をするかどうか、「権威」と言われる先生を訪ねまわり、検討を重ね、結局手術を断念しました。

でも上記の二つ以上に父にとって大きな問題は「便秘」でした。
便秘で苦しくてたまらない。息をするのも苦しくなる。
波のようにお腹が痛くてたまらないのが押し寄せる。
下剤で調整してもなかなか改善しない。
下剤を増やすと、今度は下剤のせいでお腹が痛くなる。
高齢になって腹筋が衰えてきたせいか、どんどん自分で排便する力が衰えてきたこともあるようです。

そして、高齢の男性特有の前立腺肥大。

父にとっては、このいろいろの病気のうちの何かがいつも悪くて、すべてが落ち着いている、と言う状態がありませんでした。
何かがよくなると、必ず別の何かが悪いのです。
いずれも高齢ならではの病気で、どれも「完治」が難しい病気です。
病気とどううまく付き合っていくかということなのでしょうが、いろいろ悪くなってくると、体調が悪くなると一体その中のどれが悪くなっているのか、新しい何かが悪くなったのか、もう本人もわからなくなってしまいます。

いつのまにか、父が通う病院は多岐に渡るようになりました。
内科、皮膚科、整形外科、泌尿器科、胃腸科。
どれも、その時だけではなく、定期的に通うお医者さんです。
この間に、眼の病気になったり、歯が痛くなったり、入れ歯が合わなくなったりするので、ここに歯医者さんと眼医者さんが加わります。

これだけの病院にかかるだけでも、もう大変!
本人はもちろん大変だけど、弱ってくると1人では行けなくなり、付き添い問題が次の問題として出てきます。

この病院付き添いは、老親問題として大きな問題だと思います。
介護の問題はしばしばメディアで話題になるけれど、介護の前にはだいたいこのような病院通院があり、
それと合わせて付き添い問題が発生するのではないでしょうか。
病院には元気な老人が多いとよく言われるけれど、でも本当に病院が必要な人はそうそう元気ではないから1人ではなかなか行けないもの。
でも今は同居家族が少なく、一人暮らしの人や夫婦だけの人が多く、この付き添いをどうするかは大問題なのです。
しかも高齢者の場合は、付き添いと言っても単に付き添うだけでなく、受付をする、医者に症状を説明する、医者の説明を一緒に聞く、というコミュニケーション上の付き添いも重要になってきます。
それは、年齢とともに耳が遠くなって聞き取れなかったり、会話のスピードについていけなくなることや、理解力の低下などが出てくるからです。

昔と違って、診療科が専門化、細分化し、患者はあっちに行ったりこっちに行ったりするので、
病院に通うのは本当に大変。

さらに私の父の場合は権威至上主義が強いのか、どこの名医なのか、どこの大学病院出身かなどを気にする傾向もあるようで、ますます混雑する病院に通いたがり、付き添う側にとってはさらに問題を難しくするのです。
多岐の病院に定期的に通っているので、いつもどこかに行くことになり、これに付き添うとなると、もはやつきっきり状態。
離れて暮らしている家族は、とてもつきあいきれなくなります。

さらに時間の経過とともにだんだん体力がなくなるので、付き添いの負担はますます大きくなっていきます。
我が家のように、父の付き添いの中心が老いた母という状況は、始めはなんとかなっても、だんだん続けられなくなっていくのは時間の問題です。

ここで注目したいのは、付き添い役の外部を利用すること。

選択肢としては、①介護保険で、②自費の介護サービスで、③便利屋さんなどの民間業者で。
費用面で言えば、①→②→③の順に高くなるのかもしれませんが、使い勝手を考えると使い分ける知恵も要求されます。

例えば介護保険では「病院同行」というサービスがあります。
ヘルパーが病院に行くのに付き添ってくれるサービスですが、ケアマネと相談の上、ケアプランに組み込んで行うので、急な対応は難しいでしょう。
また、病院まで付き添ってくれたとしても、順番待ちで待っている時間は介護サービスにはならないなど、自立度が高くないと現実的には利用しにくいと思います。

自費の介護サービスや便利屋さんなどの民間会社の場合は、比較的急な依頼に対応できます。
自費の介護サービスも、ケアマネさんに相談すると中継ぎしてくれます。
とは言え、どんな人か、どんな業者さんか、よくわからないと不安なもの。
できれば病院付き添いをお願いする前に、何か別の簡単なことでお願いし、少しづつお馴染みさんになっておくと安心ですね。
利用のしかたによって、介護保険が使えたり、使えなかったり(=自費)することがあるので、ケアマネさんに相談しながら進めるのは一つの方法としてオススメです。

さて我が家の場合、前提として父は家族の同行を強く希望していました。
基本的には一緒に暮らす母がいつも付き添っていました。
離れて暮らす家族はなかなか難しいとは言え、検査結果を聞く、距離が遠い病院に行くなど、両親だけでは不安があるときに、私たち子どもに呼び出し(SOS)がかかり、そこで私たち子どもがスケジュールを調整して誰かが応援に行く、という流れで勧めていました。

しかし母の負担が大きくなってきたからと、外部のサービスを利用しようと提案したところ、両親は難色を示しました。
そこで私からケアマネにその旨を相談したところ、ケアマネから両親に提案してくれました。
しかしそのときの父の答えは
「まだいい」
「家族以外に病院に連れて行ってもらうくらいなら、家で死んだほうがマシだ」
だったそうです。
それが1年前のことです。

頑固な親の場合、本人の意思を無視して進めるとこのようなことが起こるのですね。
たとえ自分でできなくても、親の威厳を保ちたい、物事のイニシアティブは親である自分が取りたい~こういうところが、昭和のオヤジならではだなあと思います。
他人事ならしみじみ思うところですが、自分ゴトとなるとイライラカリカリ(苦笑)。
今ふり返ってみると、その頃の母は今より元気でした。

1年経って両親とも老いが進み、でも私たち子どもが誰も行けないことがあったりすると
親の方から「やっぱりお願いしようかしら」という言葉がたまに出てくるようになりました。
チャンスかもしれない…。

現在私の老親は、毎月1回ケアマネさんとの面談があります。
この面談ではケアマネだけでなく、我が家に関わる介護事業者、例えばマッサージの整体師さん、体力づくりのデイサービス業者さん等があつまる会議になることもあります。
その両親とケアマネを交えての会議で、今までイヤだと言ってた病院付き添いの外部サービス利用について、再度相談してみようと思います。
果たして両親が納得するかどうかはわかりませんが、話がスムーズに進めば新しい体制を組むことにつながります。
そこで、私たち子ども3人も可能な限りこの会議に立ち合う方向で、現在スケジュールを調整中です。
仕事をしている私たち子どもにとっては、このスケジュール調整はそう簡単なことではないのですが、今後の問題を大きくしないためには、ここをうまく超えられるかどうかが大事なこと。
そう思って、次の面談に向けて準備中です。

老親が離れて暮らす場合、子どもはいかに駆けつけるかというよりは、いかにして体制を整えるかの方がはるかに大事だと思います。
離れて暮らしているのだから、そうそう駆けつけられるとは限りません。
最初は駆けつけられたとしても、それが頻繁になればすぐに続けられなくなります。

家族が万一駆けつけられなくても大丈夫な体制を作ること。
離れて暮らす家族は、その体制づくりのために何をするかです。
ケアマネさんは体制づくりの大事なキーマンの一人ですし、親にとっても子どもにとっても相談相手にもなります。
いろんな家庭を見ているだけに百戦錬磨。いろんな解決事例を持っています。
相性もあるので、気に入らなかったら、気に入る人に会えるまで交代をお願いしてかまわない、とどこの地域でも言っています。

さて、我が家の体制づくりは果たしてうまくいくのか。正直わかりません。
頑固な父がそう簡単に納得するとも思えません。
仮に親が納得して体制が作れたとしても、いつまでその体制で行けるかどうか、わかりません。
老いが進めばまた次の体制を作らなくてはなるかもしれません。
が、介護というのはこういうことを繰り返しながら、少しづつ体制づくりを進めていくしかないのかもしれないと思います。

離れて暮らす老親 介護始まり日記② 病院の付き添い問題” に対して1件のコメントがあります。

  1. 小川卓也 より:

    「如何に駆けつけるかではなく駆けつけなくても大丈夫な体制を作ること」
    帰らなければという思いと自分の生活の狭間で悶々としていたのでハッとしました。

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