今、増えていると言われる「死後離婚」。

今年2月、吉川美津子さん、芹澤健介さん、中村麻美さんの共著「死後離婚」(洋泉社)が発行されたのを機に話題になり、日経でも、NHKでも取り上げられるようになりました。

 

「死後離婚」とは?

「死後離婚」の明確な定義はありませんが、はっきりしているのは相手が死んだ後に「離婚」すること。
けれども少し幅があるようです。

明確なのは、戸籍上も婚姻関係を終了させる「死後離婚」。
役所に姻族関係終了届を出して、パートナーの親族との関係も絶ちます。

書類上の婚姻関係終了までは至らないけれど死後に同じお墓に入らないというのも「死後離婚」と言われるようです。
数年前から、夫と同じお墓に入りたくないという女性が増えてきました。
その結果「死後離婚」と言われるようになったようですが、これはどちらかと言うと「死後別居」ですね。

同じお墓に入りたくないと言う女性の話は以前からしばしば耳にしていましたが、
婚姻関係を解消する「死後離婚」のことは私も知らなかったので、知った当初は驚きました。
けれども、知れば知るほど、そこには今の社会事情が色濃く映し出されていると感じます。

まだまだご存知ない方が多いでしょうが、今の社会、意外に身近な話とも言えそうです。

なぜ「死後離婚」したくなる?

「どんなに仲が悪くても、死んじゃったんだからもういいじゃない?」

そんな声が聞こえてきそうですが、一方で

「今までずっと長いこと一緒だったんだから、死んだあとは自由にさせて」

ということも本音もありそうです。

たしかに、「死んでまで一緒にいたくないから」という理由ももちろんあるのでしょうが、
「死後離婚」は必ずしもそれだけではなく、もっといろいろあ理由があるようです。

例えば、夫はともかく、死んだあと(=お墓)に舅・姑と一緒ではイヤだから、ということ。
それは、義理の両親と関係があまりよくない場合もあるでしょうし、
そもそもあまり義理の両親とお付き合いがなかったので、という場合もあります。
昔は我慢していた(せざるを得なかった)ことも、今はイヤなときは声を出せるような時代になりつつある、ということもあるでしょう。

夫の実家のお墓がある郷里が離れていて自分と所縁がない場所だから、という女性も少なくありません。
中には夫の実家のお墓参りをしたことがない人もいて、そうなると自分が入るお墓とは考えにくいのです。
実際、よく知らない土地で、死んだ後とは言え知っているのは夫だけとなれば、寂しく感じられるのも無理ありません。

自分が入りたいお墓は別のお墓

また「自分の本当の両親の入る実家のお墓に入りたい」という方もいます。
昔のように、「家」を守る、「家」を継ぐという意識が薄れ、
長男だから、嫁に出たから、ということはあまり言われなくなりました。
別に夫の家のお墓に入らなくてもいいよね?ということなのでしょう。
兄弟の数が減ったことも影響しているのかもしれません。

これまでのような家のお墓とは違って、自分らしい「お墓」を選びたいからという思いの結果、死後離婚(=別々のお墓)を選ぶ流れもあるようです。

私は土に還りたい。
私を海に撒いてほしい。
飛んで行きたい。あなたのことを空で見守っているよ

それを叶えるために、夫とは違うお墓を望むという形です。

こうしてみると、必ずしも夫と仲が悪かった、というわけではなさそうですね。
お墓は別がいいとお互いに了解済みの夫婦もいるので、個人的には必ずしも「離婚」という感じではありません。
実は私の周りにも、仲のいいご夫婦だけどお墓は別のお墓がいい、とおっしやる方が何組かいます。

最近注目の、さらに突っ込んだ死後離婚

これまでは死後=お墓が自分とは別、の死後離婚ですが、最近の注目はもう一歩踏み込んだ死後離婚です。

お墓のお掃除やお墓の管理にうるさい夫の親戚…それは勘弁してもらいたい。

先祖代々で続いているお墓など、古い家のお嫁さんからこういう愚痴を聞くことはありませんか。

時代の変化もまだまだ過渡期。
「本家の嫁が…」「私の目の黒いうちは…」そういう親戚の声から逃げたい女性がいるのはわからないわけでもありません。
その結果、

夫が入るお墓の管理をしたくない、
夫の実家とのおつき合いを終わりにしたい、縁を切りたい

となるのでしょう。

 

婚姻関係を解消したい

けれども最近それ以上に深刻なのは

夫の死後は、一切の親戚づきあいをしたくない、

という声です。

代表的なのは、亡き夫の親の介護の負担を引き受けたくなということです。
「家」意識が薄れてきたとは言うものの、まだまだ介護と言うと女性の役割と捉えられがちだから、こういう声が出てくるのでしょう。
親戚づきあいをしたくない背景には、夫の兄弟姉妹とつきあいたくない、というケースも見逃せないでしょう。

生涯未婚率も男23%、女14%(今年4月の発表)にまで上昇している現実を考えれば、夫の兄弟姉妹がシングルという人はきっと少なくないでしょう。
その結果、「うちの家族に迷惑をかけないでね」と思っているだけでなく、きちんと縁を切っておきたいという声が増えてきたということなのかもしれません。

縁を切りたい人たちが選ぶのが、婚姻関係を解消するための手続き。
一般に、離婚すればこの婚姻関係、姻族関係は終了するのですが、
死んでしまった後は姻族関係は継続されるので、それを解消するための手続きです。
区市町村の役所に「姻族関係終了届」を提出することで、夫の親とも兄弟姉妹とも関係を解消できます。

この届け出ができるのは、生存する夫(または妻)だけ。
期限もないので、夫の死後いつでも提出できます。


死者の了解を得ようがないというのは当然ですが、夫の親など相手の親族の同意なども一切不要で、自分1人で決められるのです。
法務省の戸籍統計によると、姻族関係終了届の提出数は2005年度に1772件だったのに対して、2015年度は2783件と確実に増えています。
この「姻族関係終了届」を出さない限り、戸籍上は亡き夫の親族との姻族関係は続きます。
ちなみに、父母の方から妻との親族関係を終了させることは認められていません。

特筆すべきはたとえ「姻族関係終了届」を出したとしても、遺族年金はもらえる、ということ。

生前に離婚した場合、元夫が亡くなっても遺族年金はもらえないけれど、死後離婚ならもらえるのですね。
しかも、元夫の家族がそれを止めることはできないのです。

社会的価値観が変化しているとは言え、夫の親の価値観が古くて解放してほしいと考える「嫁」。
寿命が延びて高齢化が進み、夫が死んでも夫の親がずっと生きているケースが珍しくない現実。

それまでの夫婦の関係、相手の実家との関係が影響していると言わざるを得ません。

死後離婚を言うのは女ばかりだけど

ちなみに「別のお墓に」と言う話が出てくるのは女性側からばかりで、男性側からの話は聞いたことがありません。
亡き妻は、これまでは嫁ぎ先、すなわち男性の実家の家墓に納骨されることが多いため、少ないのは当然です。

また「姻族関係終了届」を出すのも、今のところは女性からの話が多いでしょう。
死後離婚で遺族離婚をもらえるのは、妻側だけのことではなく夫側も同様ではあるのですが、
実際のところ、妻の遺族年金をもらう夫は少ないし、介護を頼まれる夫も少ないのが現実。
時代が進んだとは言うものの、男性側からの亡き妻の親の介護の負担を引き受けたくないという声は、あまり聞いたことがありません。

また、亡き妻の親の方の意識も、娘を「嫁に出す」と考える親世代の昔の価値観であったら、
「嫁」に面倒を見てもらうことはあっても、「婿」に面倒を見てもらうことはあまり考えないのでしょう。
その結果、男性が亡き妻の家族との縁を切りたい、と思うほど頼られることも少ないのだと思います。

でもそれは、親世代だからこその昔の価値観です。
今後は男性からも「死後離婚」の希望が出てくる時代がやってくるのかもしれません。

 

 

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